第3章 凛と汐のとある休日
「どの機種がいいかなー」
凛からしたら違いのよくわからないプリクラ機たちを前に汐はそう呟いた。
「どれも一緒じゃねえのか?」
「違うよー」
汐はお目当ての機種を見つけたようで凛の手を引きながら進んでいく。
プリクラ機なんて久しぶりに見た凛は、ブースのカーテンのようなものに大きくいるモデルを見つめる。
中に入ると照明の明るさに驚いた。
なるほど、この光で肌や髪を綺麗に見せるのかと女子に話したら怒られそうなことを考えた。
コインを入れると明るさや撮りたいモードを選ぶよう機械に強要された。
こういうのはよく分からないため汐にすべて任せて撮影が始まるのを待つことにした。
「これでおっけー」
すべての設定を終えたらしく、汐は凛に声をかける。
どうすればいいのか訊こうとしたら、機械が『撮影を始めるよ』と言ってきた。
「はっ、もう撮影!?」
「うん」
「どんな顔すりゃいいんだよ」
そうしているうちにもカウントダウンが始まる。
「凛くん笑ってー」
「そんな簡単に笑えるかっての!」
「じゃあキメ顔でいいよ」
とりあえず仏頂面でなければなんでもいいことは分かった。
もうすぐシャッターがきられる。
学生証の写真の二の舞なんてごめんだ。凛は意識して顔を作った。
カシャッというシャッター音の後に今撮った画像が表示された。
「凛くん顔怖いよ」
汐に笑われた。意識して顔を作ったのに。
しかし確かに眉間にしわがよってる気がする。
隣に映る汐はバッチリスマイルなのに。
「もっと自然な感じでいいよ!あと凛くんちょっと屈まないと見切れるよー」
すぐに2枚目の撮影が始まった。
自然な感じと言われても困る。
とりあえず汐のバッチリスマイルに合わせた顔をしようと思った。
プリクラを撮り終えてふたりはブースから出た。
汐に渡されたプリクラを見てひとこと。
「なんか俺、女みてぇな顔になってねぇか…?」
美形な凛は女らしく補正されていた。
「そうかな?凛くんかっこいいよー」
映画でーと。と文字が入ったプリクラをさして汐は笑う。
携帯に画像を送ると言っていた。
寮に帰ったあと、プリクラで自然に笑う練習をこっそりしてみようと凛はひっそりと心に決めた。