• テキストサイズ

Affectionate Photographs

第3章 凛と汐のとある休日



「で、なんの映画を観るんだ?」
凛と汐は映画館のチケット売り場に来た。上のモニターに上映中の映画の空席状況が表示されている。
休日の割にさほど混んでなくどの映画でも観ることができそうだ。

「あたし〝サンタマリアの犬〟が観たい!」
「はっ…?〝サンタマリアの犬〟?なんだよそのワケわかんねー映画は」
「訳わかんなくないよ!今すごく人気だし、彩と智予がこないだ観て面白かったって言ってた!」
不可解なタイトルと、聞き覚えのない名前に凛は困惑する。

「いろとちよ?」
「部活の子だよ。彩がバックで智予がブレ」
鷹野彩と長谷川智予。共にスピラノ水泳部の2年。
汐や璃保と一緒に中1の頃からずっと一緒に水泳を続けてきている仲間だ。

「ふぅん。そうか。…お前が観たいんならこれにするか。…あ、〝サンタマリアの犬〟高校生で2枚お願いします」
凛は販売員に声をかけた。

「では高校生ということを証明できるものをご提示ください」
「はっ…?ああ、お願いします」
何故か凛だけ身分確認された。
自分はされて汐はされないことを若干疑問を抱きながら凛は鮫柄の学生証を提示した。

「ありがとうございます。高校生2枚ですね、2000円になります」


凛から手渡されたチケットを受け取りながら汐はくすくす笑う。
「凛くん高校生に見えなかったみたいだね」
「俺そんな老けてるか?」
「今日の凛くん高校生に見えないよ。すごく大人っぽくて朝びっくりしちゃった」
「なっ、」

不意打ちだったから凛は赤面する。
汐はなんの恥ずかしげもなくストレートに褒めてくるから嬉しいやら恥ずかしいやら妙な気分になる。

「…さんきゅ」
「うんうん!…ふふっ、…げっとー!」
「ああっ!おいっ、返せチビ見んな!」
「だからー、標準だって!それに今日は小さくないよ!」
凛が照れた隙に汐は財布にしまおうとしていた学生証を凛の手から奪い取った。
凛の学生証はいたずらな笑顔のもとにあった。

「この写真の凛くん顔険しくない?」
確かに汐の言葉通り、学生証の凛は眉間にしわがよっていて目つきが鋭い。
カメラに恨みでも抱いていたのだろうか。

「それ、写真撮るタイミングが悪かったんだよ。普通は撮りますって言ったあとシャッター押すだろ?それ、撮りますって言いながらシャッター押されたんだよ」
撮り直しをお願いしたが却下されたらしい。
/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp