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Affectionate Photographs

第3章 凛と汐のとある休日


ふと凛は周囲に人が増えてきたことに気づいた。
電車が到着したのだろう。汐はこの電車に乗ると言っていた。


(もうすぐ、だな)

汐は小さい。人混みに埋もれてるのではないかと考えたら可笑しくて小さく笑みが漏れた。
すると、見慣れた樺色の髪の女の子が視界に入ってきた。
心なしか背が高い気がする彼女は凛の視線に気づいたらしく小走りで寄ってきた。


「凛くん!おはよう、お待たせ!」
「おはよ。別にそんなに待ってねえよ」
実は時間の15分前からここにいたのだが、それは言わなかった。

目の前にいる汐を見て、ふと凛は違和感を覚えた。
「なんか今日お前高くね?」
「あー今日ね、インヒールスニーカーだよ」

どうやら靴で身長を盛っていたらしい。
いつもは自分の顎くらいの位置に汐の頭がくるのだが、今日は違った。普段よりも視線が近い。

凛は無言で汐を見つめる。
否、見惚れていた、という表現のほうが正しいかもしれない。
今日汐は化粧をしていた。化粧をしている汐を凛は初めて見た。
化粧を施さなくても十分可愛いのだが、化粧をするとまた雰囲気が違って見える。
ナチュラルメイクがよく映えている。コーラルピンクのリップとチークが愛らしさをより際立たせていた。

さらに今日のコーディネートはこの前汐の家に遊びに行ったときと違って少し大人っぽいものだった。
黒のパフスリーブで白地に黒いグラフチェック柄のトップスの裾を膝上ほどの丈の白いフレアスカートに入れ込んでいた。足元は白いインヒールスニーカーですこしはずす。
モノトーンでまとめたコーディネートにネイルやアクセサリーに赤を取り入れて差し色にしていた。

「どうしたの?凛くん」
「えっ、ああ、いや、なんでもねぇ」
いつも以上にぱっちりとした目が凛を捉えた。
その視線から逃げるように凛は目をそらす。なんだか顔が熱い。

「汐、お前今日別人に見える...」
「髪巻いてるからじゃない?」
凛的には〝今日のお前いつも以上に可愛い〟というニュアンスで言ったのだが汐にはあまり伝わってないようだった。

「ちげえよ。...その、可愛い、って意味だよっ...」
「えっうそ、ありがとう!」
「っ、ああもう...!ほら、行くぞ!」
ぶっきらぼうに言った凛に対して明るく返す汐。
なんだか恥ずかしくなってしまって、凛は嬉しそうににまにま笑う汐の手を握り歩き出した。
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