第1章 着火
「………名前」
「ん?………いてててっ!何すんだよ!?」
何か知らんが、リオンがいきなりあたしの頬をつねってきた。
「じゃあ、仮にお前のそれがエゴだとして。そのエゴに救われた僕は一体なんだ?」
「………え?」
「名前が神の掟を破ってまで僕を救ってくれなかったら、零児たちと会う事も、スタンやルーティたちと和解する事もなかった。 カイルたちと旅をする事もなかっただろうし、バンエルティア号の奴らと任務をこなす事もなかった」
「リオン………」
懐かしむように、リオンは青々とした空を見上げていた。
よくよく考えたら、かなりの時間をリオンと過ごしたんだよな。
あたしは神だから、時間という概念をあまり重視してなかったけど。
それに、と、リオンは続ける。
「ヒューゴ…父さんやマリアンと暮らせて、そして、名前がいて………僕は、今が本当に幸せだ。それでも、自分が行う行為をエゴだと言えるか?」