第9章 花宮真編
「なんだよ、ここにいたのか。」
背後で声がした。
確かに会いたいと思った。
私はばっと振り向いた。
―花宮先輩が悔しそうな顔をしていた。
だけど、私はばっと前を向き直した。
あれ、試合終わったんですね。
私はつんっとして花宮先輩に言った。
本当はそんな事をしたい訳じゃないのに……
花宮先輩は黙ったままその場にいた。
暫くして痺れを切らした花宮先輩は言った。
「アリサ。」
少し鼻をすする音が聞こえた。
私は振り向かないっと意地をはる。
心配になって振りかえったら花宮先輩に、引っ掛かったバァーカとののしられそうで……
「バチが当たったんだ。俺。」
私はまだ振りかえらない。
花宮先輩も動く気配がない。
そろそろ気まずい。
「アリサ、お願いだ、振り返ってくれよ。」
私は、試合負けたんですか、と言った。
「負けた。
なぁアリサ、お願いだから振り返ってくれよ……」
私は痺れを切らし、振り向いた。
花宮先輩は手で顔を隠している。
「……俺を慰めてくれよ……」
私は騙されるだろうなって思って、だけど、心配になったから、花宮先輩に近づく。
自分の顔を近付け、花宮先輩の顔の様子を伺うと……
「…………バァーカ」
花宮先輩は、私に舌を出して笑う。
私は騙されたと思った。
―けど、顔は泣いた痕が残っていた。
チュ
私はすぐに気がついて、強がる花宮先輩に思わず頬にキスをした。
「なんだよアリサ、俺は騙したんだぞ!?
怒らねぇのかよ!?」
花宮先輩、花宮先輩はバスケが嫌いなんだって言う事を言ってごめんなさい
素直に謝れなくてごめんなさい……
花宮先輩は、バスケで負けて悔しい思いをしたんだなって私は感じた。
私は素直になれない花宮先輩を抱き締める。
すると、花宮先輩は強引に私の唇にキスをした。
チュッ
「俺の彼女でもねぇ、アリサに慰められるなんてごめんだ。
俺の彼女でもねぇやつが!!///」
花宮先輩はそう言っておきながら、私を強く抱き締めてくれた。