第5章 紫原敦編
私は陽泉高校のバスケ部のマネジャー。
今はウィンターカップで、試合があって大忙し。
マネジャーの私は、バスケ部のサポートにあちこち駆け回る。
私は、キセキの世代と呼ばれた紫原敦、通称むっくんと帰国子女の氷室先輩と仲良くしている。
「ご苦労さま、アリサちゃん」
練習で汗だくな氷室先輩にタオルを渡す。
素敵過ぎる笑顔で私は顔を赤くした。
「アリサちん、俺にもタオル~」
はいはーい、むっくん待っててね。
私はむっくんにタオルを渡した。
しかし、むっくんは受け取ろうとしない。
「…………」
むっくんは何故か私から視線を反らし、私の手にあるタオルをさっと乱暴に取った。
私は、むっくんが怒っているところを見ていて、何かしたのかな……と聞いた。
「別に~」
氷室先輩は私をちらっと見てから、むっくんに言った。
「敦、今日は様子が変だぞ?
彼女が何かしたのか?」
氷室先輩は、むっくんと暫く話をしていたが、私が心配そうに様子を眺め、むっくんと目が合うと視線をそらされた。
「室ちんには関係無い事だし、様子が変なのは、試合があるからぴりぴりしてるだけ。」
「そうか……ならいいんだ。」
「室ちん、アリサちんの事が好きなの?」
「あぁ、友達としても、マネジャーにしても好きさ。」
私はどんな会話しているのか聞こえていた。
ただ、むっくんが怒る理由が知りたくて……
部活動が終わった時、氷室先輩はむっくんと一緒に帰るように私に言ってきた。
「たまには、敦と二人っきりになって帰ってやってくれ。」
私は、校門の前でむっくんを待つことになった。