第1章 東京から来た男の子
入学式は無事終わり、教室に行くと。
「同じクラスだね~」
「悪夢だ……」
あまりにも彼が背の順で後ろにいたせいで、同じクラスだと認識しなかったらしい。
「あらら~? 席も隣だね~」
一番後ろの右端。本来なら喜べるような場所なんだけど……。
「あ~、オレはずっと後ろだから。でっかいからそうじゃないと邪魔なんだってさ」
紫原は聞いてないことを語りだす。
大量のお菓子袋を机にぶら下げて、ね~ね~と甘えた声を出す。
「ね~ってば」
「なんですか」
突き放すように冷たい声であたしは答えた。
紫原は気にせずふにゃりと笑った。
「秋田のこと教えてよ」
「ほかの子でいいでしょ?」
「知り合いいね~もん」
「あんた部活特待生なんだって? 部活の先輩とかでいいじゃん」
そうなのだ。こいつは東京から呼ばれてきた、キセキの世代とか言われるスーパーエースらしいのだ。
ちなみに、バスケ部でポジションはセンター。
まあ、でっかいしね。納得。
それで、バスケ部にはあと2mが2人いるっていうんだから、すごいよね。
「監督とか、美人で有名だけど」
「まさ子ちん?」
「あ? 何そのあだ名」
「ん、スカウトしに来たから知ってるよ、美人だよね」
「その人頼ればいいんじゃないの?」
「確かに事情を知っての上でオレをスカウトしたのはあの人だけどさ~……」
紫原は納得いかなそうにぶつぶつと何かを呟く。
「……あの人こえ~もん……元ヤンだっていうし」
「強豪校の監督がやさしいわけないでしょ」
「そうなの?」
「そうなの!」
ったく。どこかずれてるんだよな~こいつ。
「まさ子ちんからも、クラスで誰か病気の協力してもらえる子つくれって言われてるんだよね」
「普通に考えて男子のことだよね、それ」
「ま~女子じゃ襲っちゃうしね~」
のんびり紫原は言うけど、それって大問題だからね!?
「大丈夫、オレ最後まで手出したことないし」
「あったら最悪だよ!」
「そう言うのは好きな人と、ね?」
口に指をあてる紫原にめまいがする。
ダメだこいつ、マイペースにもほどがある。
「いちおう朝のことさ、まさ子ちんにメールしたんだよね。ここでの保護者だから。そしたら、あとで一緒に来いって。なんだろうね?」
今から、嫌な予感しかないんだけど!?
あたしは悪寒を感じながら席についた。