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お腹が鳴るころに(黒子紫原同級生夢)R15

第1章 東京から来た男の子


 何するの、と言いたいのに体格差がありすぎて何もできない。
 ごろん、と口の中で何かが転がる。
 そしてそのままにゅっとしたが口の中から抜けていく。
「おいし~……」
「あたしの飴玉……」
「……あんた誰?」
 男の子は飴をなめながら、あたしを見る。
「それはこっちのセリフ!」
「お菓子持ってない?」
「……クッキーなら」
「頂戴」
「いや」
 こんな失礼なことする人に、あげるもんですか。
「くれないの~?」
 じゃあ、と彼はあたしに手を伸ばす。
「きゃっ」
 おもむろにあたしのスカートに手を突っ込む。
「ひゃっ」
「ここにはないの? ほかにポケットは」
 彼はあたしの胸を見た。
 やばい。このままじゃ胸を触られる。
 あたしは慌ててクッキーを鞄から取り出した。
「はい! これ!」
「わ~ありがと~」
 無邪気そうな声を上げるけど、これ、強奪だからね!?
 むしゃむしゃとクッキーを食べる彼を見て、どこかへ行こうとすると。
「まって、お礼……しなきゃ」
「お礼?」
「ん~……なんかなあい?」
 丸投げかい。
 ゆるーいテンポでしゃべる彼は、先ほどの彼とは少し印象が違った。
 ぎらぎらし雰囲気は消えて、子供のような無垢な表情になっている。
「考えとく。あんた陽泉の生徒でしょ?」
「なんでわかるの?」
「制服」
「あ~……」
 あ~……って。同じ学校に通うんだからわかるに決まってんじゃん。ゆるいな、この人。
「オレ、紫原敦」
「……」
「」
「変なあだ名つけないでよ」
「かわいいし~」
 にこっっとかわいらしく紫原は笑う。
 思わず顔が赤くなる。なんだこれ。
「なんでさっきあんなことしたの?」
「ああ、あれ。オレ病気だから」
「え?」
「おなかすくと別人になっちゃうの~困ったね?」
 本当に困ってるのかわからない調子で彼は言った。
「あんまり記憶ないけど、ごめんね?」
 こてん、と首をかしげて謝る彼に、思わず脱力。
 ふざけんな。
「……あんまりあたしに学校で話しかけないでね、先輩」
「え」
「え、って3年生じゃないの?」
 おっきーし。
「オレ、新入生」
 同じ歳かい!?
 信じられない! 2mはあるんじゃないの!?
「仲良くしてね?」
「拒否る!」
 へらりと笑う紫原に、あたしは言い捨てた。
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