第3章 合宿へいこう!
「これがーキセキの試合」
監督に見せられたDVDを見てあたしは息をのんだ。
それぞれの圧倒的なプレイ。まねできないそのスキルは、紫原に匹敵するーーさすが同じ世代と言われるだけはあるものだった。
バスケに詳しくないあたしでも、それが異常なことだとはわかる。
「どうだ」
「監督……本当に彼らは高校生ですか」
「このDVDは中学生だな」
帝光中ーーこんな化け物のような5人が一度に同じ学年に揃ったキセキの学校。全戦全勝ーーまさに、それを実現できたバスケ部があった場所。
陽泉だって強い。それは紫原をのぞいてもそうだ。
それでも、帝光中はそれどころじゃなかった。エース格しかいない。それもまだ発展途中。どこまで伸びるか考えるだけでめまいがする。
その、めまいがする今。成長している彼らとあたしたちは戦うのだ。
「お前はバスケに無知だろうから、色々かしてやるよ。まあ、スコアブックの付け方だとかそういうものはばっちり覚えてくれたが……ほかの学校にも目を向けるといい」
「はい……」
力のない声しか出なかった。
彼らはみな別々の高校へ進み、それぞれ最強を目指している。はっきり言って、彼らが今の高校男子バスケットボールの主役と言っても過言ではないだろう。
そんな、主役の1人をゲットしている陽泉は、とても運がいい。理由が理由であれど、紫原1人の力はとても大きい。
キセキの誰と当っても、勝つか負けるかわからない。
この圧倒的パワーを持つ紫原をもってしても、それは戦うまで結果が見えないのだ。それはとてもすごいことだ。
「?」
背後から紫原の声がした。
「なあに、オレじゃん。昔の試合みてたの~?」
「ああ、いい勉強になるかと思ってな」
「まさ子ちん、今のオレらはこんなんじゃね~よ。あんまり参考にならないから、高校の試合見せれば?」
「それも見せる気だが、まずはここからだろう。ここからお前たちのすべてが始まった」
「そういうもん?」
「伝説の始まりは、バスケにかかわるのなら見ておくべきだ」
当事者の紫原はポリポリと頭をかきながら興味なさげに監督の話を聞いていた。
「すごいね……」
ようやくあたしの口から出た言葉はこれだ。
「キセキって、すごいんだね」
「あ~?」
「あたし、頑張って勉強する! キセキも、ほかの高校も!」
「あ~そう?」