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お腹が鳴るころに(黒子紫原同級生夢)R15

第3章 合宿へいこう!


うとうとと眠気が来る。
 目の前には紫原の顔。
「眠れないの? 」
「うん、まあ」
「怖いよね、暗くて」
 そう言うわけじゃないんだけど……どちらかというと密室に二人きりっていうほうがどきどきして眠れないんだけど……。
 言えるかっ! そんなこと!
 倉庫には、窓も何もない。真っ暗の中夜目を使って紫原を見る。
「ここにお菓子ないかなぁ」
「おなか減ったの?」
「ん? そんなことね~し、平気」
 多分、暗いけど紫原は笑ったのだろう。
 白い歯が見えた。
 そんな中で、あたしは夢に落ちた。

 真っ暗中で目が覚めた。
 紫原のお腹の音で。
「大丈夫?」
「へ~き」
 よだれを抑えて言われても、説得力はなく。
「離れてて……」
「うん……」
 苦しそうにうめく紫原。
 キスで楽になるのなら、今のあたしなら別にいいんだよとさえ思うけど、気持ちを伝えていない以上そんなことも言えなくて。
 おなかの音はどんどん増すばかりで。
「ねぇ、紫原っ」
 あたしは勇気を振り絞った。
 その時だった、扉が開いたのは。
「何してんだお前ら」
「……荒木監督!?」
「まさ子ちん!」
 状況を察したらしい荒木監督は、ちょっと待ってろと言って食べ物を調達してきてくれた。
 がつがつとそれに食らいつく紫原。
「お前らな、なんで押して入った場所を引いて出ようとしなかった」
「すみません」
 そうだったのだ。
 あたしたちが出られなかったのは、引く場所を押していたからだったのだ。
 荒木監督は倉庫から聞こえる紫原のお腹の音を聞きつけてやってきたらしい。
「あたしだからよかったものの、男女がこんな密室でいたら誤解されるぞ」
「ありがとうございました」
「まあ、何事もなくて何より」
 そう言って、荒木監督は薄く笑った。
 あたしは気の抜けた状態で立ち上がる。眠い。
「お前は先寝てろ。あたしは紫原が満腹になるまでいる」
「……はい」
 言われるがままに、倉庫を出る。
 荒木監督には、一生かなわない気がする。
 ライバルとしても、人間としても。
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