第2章 陽泉高校バスケ部マネージャー!
「、先輩が呼んでる」
クラスメイトに声をかけられ、携帯をいじる手を止める。
なんだろう?
部活の先輩かな?
そう思って呼ばれて行ってみると、知らない女の先輩が数名。
「むっくんと付き合ってるって本当?」
「むっくん?」
誰だ、それ。
「紫原君」
きつい口調で先輩は強調する。
「つりあってないよね? わかってる?」
あー、これは。
紫原のファンってやつ?
さすがエース。もてるねぇ。
……なぁんてぼんやり先輩を眺めてる場合じゃないんだけどさ。
なんか漫画みたいだなって思っちゃった。紫原親衛隊?
そこまではいかないけど、こういうのってあるんだ。
「あたしから告白したんじゃないんで」
「むっくんが一目ぼれだそうね」
「そうですね」
そういう事になってるね。
「あのかわいいむっくんを、独り占めしようなんて……」
「はあ」
思わず間の抜けた声が出る。
「みんなの弟だって決めているのに」
そうですか。
「別れなさいよっ」
「嫌ですけど」
「なんですってぇ!?」
ヒステリックに先輩が騒ぐ。ほかの先輩がそうだそうだと後ろから声を上げる。
「紫原が嫌がると思いますよ?」
「うん、いやだねぇ~」
「!」
「むっくん!」
背後から現れた、紫原に先輩は絶句している。
「なんか、が先輩たちに呼ばれたっていうから気になってさ~。先輩たち、オレの大事な彼女に何言っちゃってんの? オレそういうことする人キラ~イ」
「むっくん、そんなあたしたちは……」
「むっくんのためを思って、お姉ちゃんたちは……」
「いつもお菓子くれるのは嬉しいけどさ~、先輩たちのものじゃないからね? オレ。わかってくれるよね?」
こてん、と首を傾げて紫原。
先輩たちの目がハートになる。
「もちろんっ」
「ごめんねむっくん、彼女さん……」
「でも荒木先生に告白したって噂は?」
先輩の人が思いついたように尋ねる。
「嘘だよ」
真顔だった。
紫原は、にこりともせずに言い切った。
「そっかぁ」
気迫に押され、先輩は作り笑いをしながら頷く。
「そうだよね、先生と生徒なんてそんなのありえないよね」
「そうそう」
(……紫原)
胸が締め付けられるようだった。
「いこ」
気が付いたらあたしは紫原の腕をとって走り出していた。