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お腹が鳴るころに(黒子紫原同級生夢)R15

第2章 陽泉高校バスケ部マネージャー!


「オレがね、まさ子ちんを好きになったのは東京にまさ子ちんがスカウトに来た時。あー気が強そうだなって思った。そしてすごいタイプだなって思ったの」
 紫原が、誰もいない教室であたしに語る。
 ずず、と紙パックのジュースをすすりながら。
 部活動も終わった夕方は、もう外も暗い。
「男子を束ねる強い女性ってだけでもかっこいいのに、オレを特別扱いしないんだよね。まあ、試合では別だけど、普段の話ね。スカウトの時もこびないし、機嫌を取ろうとしないの。皆なんか餌をぶら下げてくるのに、自分のバスケ部の話しかしないの」
 そう言って、紫原は空になった紙パックをヒネリつぶした。
「潔いところが気に入ったね。この人と付き合えたら最高だろうって思ったけど、その思いが最高に迷惑だろうってことにもすぐ気が付いた」
 だって、部員と監督だよ? 付き合ったのがばれたら、まさ子ちんが大好きなバスケにかかわれなくなるでしょ? でもまぁ、止められなくて告白したんだけどさ。
 紫原はそう、苦笑いを浮かべた。
「まあ病気のせいで迷惑かけちゃってるけどさ~」
 眉根を寄せて、紫原はため息をつく。
「あの人から、バスケを奪っちゃいけないんだ」 
 だから、あたしと付き合うふりをする。
 ……なんて、純粋なんだろう。
 紫原って、思ってるイメージと違うかも?
「辛気臭い話、終わり。これ絶対ほかの人に秘密ね」
 しーっと人差し指を口元にあてて紫原。
「あたし、絶対言わないから!」
「ありがと」
「絶対絶対言わないから……」
「うん、心配してない。だってそう言う人でしょ、って」
 紫原はふにゃりと笑う。
 だから、あたしも取りあえず笑った。
「暗いから送ってくね。ごめんね? 遅くなっちゃったね~」
「大丈夫。彼氏が付いてるから」
「そだね~」
 あたしはカバンを整えて、前を行く紫原についていく。
 大きな大きな背中が、今日のあたしには自分と変わらないように思えた。
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