第2章 陽泉高校バスケ部マネージャー!
インターハイに向けて、練習が始まった。
紫原のレギュラーはすでに確定されたものらしい。
それに対して、文句を言うものはいなかった。
紫原本人を除いて。
「……まじでめんどくさいし」
「そんなこと言わない」
「おなか減った……」
「あーはいはい」
ビスケットを紫原に渡しながら、あたしはスコアブックをいじる。練習試合はどれも、紫原が圧倒的な成果を出した。
ゼロゲームも、珍しいものではない。
紫原はずっとゴール下に立っているだけだというのに、それでも威圧感は半端なかった。
2m越え3人もそろえば、なおに無敵だ。
インターハイは夏。
夏になったらアイスクリームでも持ち歩か仲いけないのかなあ、あたし。
じゃないと紫原が暴走しそう。
ていうか、開催地まで行かなきゃいけないんだよね。何気にめんどくさいのはあたしも同じかも。
「ってさあ」
「何?」
「好きな人いる?」
「はあ?」
なんでそんな質問訊くわけ?
わけわかんないんだけど。
床に座り込んだ紫原は、黙々と口を動かしていく。
「いないけど?」
「じゃあ付き合ってよ」
「はあ?」
何を言うとるんじゃ己は。
「建前でさ。ずっとくっついてても違和感ないように……だめ?」
「駄目っていうか、彼氏出来なくなるじゃん。それ」
「高校の間だけだよ~」
「青春送りたいんだけど」
「あらま。そうなの?」
「そうなの」
意外そうな顔が、ちょっとむかつく。
「ん~でもさ、多分もう誤解は広まってるでしょ。付き合ってるって。だからさ、もうそういう事にしとこ~よ」
それは、否定できないけど……。
「そもそもさ、こんなでかい男が近くにいる女誰がアタックするの?」
「……サイアク」
確かに、よく考えたらその通りだ。
あたしが男なら、怖くて手なんて出せない。
「まさ子ちん喜ぶと思うよ」
「なんで荒木監督?」
「ん、オレまさ子ちん好きなの」
「はあ!? 初耳!」
「告白してふられたんだけどね」
そりゃそうだろうね!
生徒と先生だからね。
「だからきっと、安心すると思うんだ」
(……こいつが、荒木監督を好き……)
この前の出来事がフラッシュバックする。
何気にやばい状況だったんじゃ……。
「わかった。いいよ」
「本当に?」
気が付けば、あたしはそう答えていた。
「ただし、条件があるの」