第9章 神さまの目にも涙
「薺ちゃん……ごめん、
僕……本当にごめんね」
床に膝をついて泣く
泣き虫な神様は、
私が一番愛した人だった。
今頃どこかで怖い顔して
働いているだろう鬼は、
私が一番愛している人だ。
本当はちょっと
気にしていた。
元彼との廃屋の一件で、
鬼灯様が咄嗟に呼んだのが
『紗英……っ!』
カノジョの名前だったこと。
すごくすごく
つらかった。
優しく慈愛に満ちた顔で
花のように笑う白澤様が、
薺(わたし)には
悲しい笑顔しか
見せてくれないこと。
「白澤様、……どうか
顔をあげてください」
いやいやと首を振って
顔を上げようとしない
そんな白澤様の整った
つむじを狙って私は──