第9章 神さまの目にも涙
ドスゥ……ッ!
「ひぎっ!!」
おもっくそ振り抜いた
手刀をくらった白澤様は
変な断末魔を上げた。
「痛たああ!ちょ、え?!
何してんのさ君は鬼か!!」
「いえ人間です。ああ、
でもチョップは鬼直伝です。
……少しは元気でましたか」
絶句、沈黙、それから溜息。
へなへなと気の抜けた
白澤様は萎んだ風船みたい。
「はあ……ったく
敵わないな、君には。
ほんと……悔しいよ」
はは、とまた悲しい顔で
笑ってみせる彼のために
私が出来ることはないのだろうか。
『私は愛しています。
……私の勝ちですね』
いつだって目の前の私を見て
愛してくれる、彼のために
私は何が出来るのだろう。
「では白澤様、行きましょう」
「へっ?え、どこへ?」
「地獄ですよ」
愛さなければよかった。
でも、愛してくれて──
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.
「ありがとうございます淫獣様」
「うん。うん?え、なに?」
「何でもありません。
ただのひとり言です」
「ふうん……?
(でも今さらっと淫獣って
言わなかった……?)」
【九ノ章】
神さまの目にも涙___終