第9章 神さまの目にも涙
細くて暗く、そして
狭く苦しい道を進む
息ができない
目も見えない
ここは、どこなのだろう。
時折聞こえる女性の悲鳴は
それを励ます男性の声援は
ああ、なんだか
意識が遠のいてきた。
眠い……
もう、このまま
寝ちゃおうかな。
『先生!赤ちゃんの心拍が!』
『鉗子!早く!』
『がんばれ!もうちょっとだ!』
暗い道の途中で
うずくまっていると、
誰かの手が伸びてきて
突然そこから引っぱり出された。
寒くて、眩しくて
それにすごくお腹が空いてて
誰かに抱き締めて欲しくて
だから思いきり泣いちゃったんだ。