第8章 【団栗ころころ】
既に兆し始めていた
それを見せつけると、
君はトロンとした瞳を返した。
ああ、うん。
いいねさすがは僕の調合。
良い具合に効いてるみたいだ。
「君を……愛してるよ」
耳元でこれ以上にないほど
甘く、優しく、囁いた。
ありとあらゆる君の
正常な判断を、感情を
僕が奪い去るために。
「僕を受け入れてくれるね?」
「……は、い…………」
さあ、最後の仕上げだ。
ありったけの神気を開放して
彼女の瞳を見つめる。覗きこむ。
充分に血液の集まった愛欲を
下生えに隠れた蜜口に当てがって、
直接君の中に僕を注いでいく。
「君は、……っ誰?」
「わ、たし……は……紗英、です」
「……そう。そうだね。紗英だ」
何度も言い聞かせる。
君にも、僕自身にも。