第8章 【団栗ころころ】
「なぜって、あはは」
そんなの決まってるじゃないか。
ほら、あれと同じだよ。
赤い頭巾をかぶった
人間の童話があったろ。
あれの狼と同じさ。
「好きな女の子とお茶
したかっただけだよ」
「う、……そうですか」
困ってる困ってる。
だけど、意地悪は
やめてあげない。
大体この間の電話はなにさ。
神様が怒ると怖いんだぞ。
「僕ん家に呼び出しちゃったから
そんなに警戒してるのかな?」
わざとらしく眉を下げて
聞いてみると、君は一瞬
言葉につまってから
「いえ……、はい、ええと」
煮え切らない返事をする。
まったく不愉快極まりないよ。
全身から鬼灯(あいつ)の
匂いなんかさせちゃってさ。
本当に──
「イライラするなあ」