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(R18) 雑草ノ花 (弐) ─鬼灯の冷徹─

第7章 【パンチヒーロー】後編



「……と、お喋りはこの辺で。
そろそろ風呂が沸くと思います」

湯呑みの中身が半分を
ようやっと過ぎた頃、

鬼灯様は腕まくりをして
風呂場へと消えていった。

ひとり残った彼の部屋で
妙な郷愁を感じながら、
くるりと辺りを見回してみる。


「あ……」


見つけたのは小さな花。

まだ、持っててくれたんだ。

それは前世で、私がまだ
賽の河原の子供だった頃

鬼灯様にあげた花だった。

押し花にしてあるけど、
思い出はあの日と
何も変わってない。

針山を越えてくる熱風
ザワワと咲き誇る彼岸花

真っ暗な地獄に咲く赤が
なんとなく、彼に思えて、

それでプレゼントしたんだっけ。

「ほんと……どうして
気付かなかったんだろ」

こんなに近くにいたのに。
あんなに愛してくれたのに。

あたたかいものが
込み上げてくる。


「……っ! え、薺さん……?」


風呂場で湯加減を確かめる彼に
大きくて広い、彼の背中に

私は頬を寄せて抱きついた。
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