第7章 【パンチヒーロー】後編
まさか、と言うべきか
やはり、と言うべきか
私は地獄の光景をよく
覚えていたし、実際に
ここへ来たことで前世の記憶は
より濃く鮮明に
思い出されていた。
「既視感でしょうね。恐らくは」
「既視感、ですか……?」
「デジャヴとも言います。
紗英さんでいた頃に、廓で私に
助けられたことがあったでしょう」
その記憶とさっきの廃屋での
一件が、本能的に重なって
無意識に私を呼び出した。
まあ、そんなところでしょうね。
「まさか貴女に降霊術の才が
あるとは思いませんでしたけど」
鬼灯様は熟々と話ながら
慣れた手つきで茶を注ぐ。
熱々の湯気が湯飲みから
立ち上って、懐かしい
(彼特製の激マズイお茶の)
匂いがあたりに広がった。
「(うう……まさか、また
これを飲むことになるなんて)」