第7章 【パンチヒーロー】後編
ライターの炎は地獄へと
続く常世の入り口だった。
どこぞの猫型ロボ顔負けの
不思議な道具は、鬼灯様の
幼馴染みが作ったものらしい。
ヒトひとりが充分に潜れる
大きさに燃え広がった火の中を、
鬼灯様に手を引かれて歩く。
「あ、お母さん。今日ね、
友達の家遊びに行ってくる。
うん……うん、迷惑かけない」
親御さんにはちゃんと
連絡しておきなさいよ。
鬼灯様にそう諭されて
母に電話すると、案外すぐに
お許しがもらえてホッとした。
行き先が地獄だって知ったら、
お母さんきっと三日は寝込むな。
などと考えていた時だ。
突然周囲の温度が上がって
ほのかな鉄の臭いが
鼻腔に浸蝕してくる。
ああ、帰ってきた。
「……ただいま」
無意識にそう呟いた私に
鬼灯様は、少し面食らって
「──おかえりなさい」
嬉しそうに目元を綻ばせた。