第6章 【パンチヒーロー】前編
「……っ!……っ!!」
息が、酸素が、
苦しい。誰か。
たすけて……!
祈りは虚しく闇に消え
代わりに見えるのは、
醜く歪んだ彼の顔だけ。
彼から伸びた二本の腕が
蔦のように絡みつき、
掌が私の首を締め上げる。
引き摺りこまれた廃屋は
ひどいカビの臭いがした。
「アハ……いいなァ、その顔」
朽ちた床
砂埃の味
馬乗りになった彼の息は
荒く、その口元には薄い笑み。
凄まじい力で私を
押さえつけていた腕が、
片方だけ離れていく。
「か、ハッ……ゲホッ」
一気に流れ込んでくる酸素に
咽せこんでいると、今度は
スカートを腹まで捲りあげられた。
「へ、へへ……、
殺されたくなかったら
大人しくしてろよ……?」
「や、ひ……ウ、ッ」
やめて!
叫ぼうとした瞬間
未だ私の首に残された
もう片方の腕に、
喉を潰される。
ショーツが乱暴に
ズラされて、秘部が
外の空気に曝される。