第6章 【パンチヒーロー】前編
悶々として過ごす
一日は、驚くほどに
あっという間だった。
ロングシフトを終えて
バックヤードに戻り、
制服をハンガーにかける。
鬼灯様とは上がり時間が
一時間違うため、ひとり
退勤時間を打刻した。
「お先に失礼します」
発注作業中だった店長に
短く告げ、店を後にする。
鬼灯様はレジで
接客していたので
会釈しただけだ。
夜の帰路はうすら寒く、
思わず肩と頬が近くなる。
急ぎ足で自宅へと歩みを
進めていた、その時だった。
「よう、薺。遅かったなあ?」
閑静な住宅街の、細い路地。
暗がりから姿を表したのは
私の、──カレシだった。