第6章 【パンチヒーロー】前編
「おや、目が腫れてますね」
昨夜は大丈夫でしたか?
店長がいるにも関わらず
彼が平気で問うものだから、
ハゲ散らかした中年店長が
「えっ、君たち、えっ」
だなんて気味の悪い声を出す。
おっさんよ、
それはただの勘違いだ。
言ってしまいそうになる
言葉をどうにか飲み込んで
鬼灯様をジトッと睨んだ。
「私の顔に泥でもついてますか?」
なんてわざとらしい。
「いーえ、別に。なんでも。
ドリンクの補充してきます」
ふん、と鼻を鳴らして
私はウォークインへ姿を消した。
「いやいやいや、えっ?
加々知くんも隅に置けないねぇ。
早速、痴話喧嘩?ん?ん?」
「……黙れ」
「ひえっ!?」
「お客様が来たようなので
レジに行ってきますね。店長」
この時の加々知くんは、
まるで鬼のような顔をしていた。
店長は後にそんな、
まさに言い得て妙なことを
遠い目で語ったという。