第5章 【彼女が見た夢】
私は、私だ。薺は思う。
前世がどうであれ、
私には私の人生がある。
鬼灯や白澤とはまだ
出会ったばかりに過ぎないし、
もちろん恋慕の情はない。
その、はずなのに・・・
胸を蝕むこの感覚は何?
薺は苦悩する。
私は、私でしょう?
心では分かっていた。
でも、頭がそれを
認めようとしない。
魂で惹かれる恋。
紗英の思念に触れたことで
薺にも、はっきりと分かる。
カノジョは白澤を求めている。
未来永劫、彼と結ばれることを。
「私は、私……。私は、」
これからどうするべきなのだろう。
この心は、この体は、
どこにあるべきなのだろう。
薺には分からなかった。