第2章 再会を祝して痴話喧嘩
薺には霊感なるものがあった。
物心ついた頃から、
周囲の人間には
見えない物が見えた。
それは人間の形だったり
時には妖怪のようなものもいて、
見えざるそれらに薺は困惑した。
いつだったかのお盆に、
夜空を飛ぶ幽霊だって
見たことがある。
幽霊達は墓場でよく見る
茄子や胡瓜に乗っていて、
幼い薺を驚かせたのだった。
だから、彼女には
理解できてしまう。
「僕の名前は白澤(ハクタク)。
近い将来君の旦那さんになる
イケメン漢方医のお兄さんだよ」
「何勝手なこと言ってるんですか。
紗英……ああいや、薺さんは
私と結婚する運命なんですよ」
突然何の前触れもなく
部屋に押しかけてきた
彼らが、少なくとも、
人間ではないということを。