第2章 再会を祝して痴話喧嘩
彼女が見る夢の終わりは
いつも、決まってこうだ。
明るくて温かい
橙色の光に包まれて
天へと昇っていく。
赤ん坊の泣き声が聞こえる
優しい男女の声が聞こえる
そして最後には、
涙を流す男の声が
聞こえるのだ。
「……はあ」
目を覚ました彼女は、
名を薺(なずな)という。
魂ごと抜け出そうな溜息を吐いて、
薺は濡れた自身の頬を拭いた。
この夢を見ると必ず涙が出る。
どうして……?
立ち上がって洗面台に向かう。
冷たい水に顔を浸し、
腫れた目を冷やした。
薺は、今日、生誕してから
十六回目の誕生日を迎える。