第4章 鏡ノ塔
懐かしいやり取りに
えも言われぬ幸せと、
胸のくすぐったさを感じつつ
鬼灯は「それにしても」と
切り出して薺の手を握った。
あまりにも自然な流れで
握られてしまったものだから、
薺は抵抗せずに頬を赤くする。
「前世のことを思い出して
よく平気でいられますね。
無理してるんじゃないですか」
鬼灯は薺の手首にそっと
自身の指を触れさせ、
彼女の心拍数を測っていた。
「うーん……複雑ですけど、
不思議と辛くはないです。
鬼灯様と居るの楽しいし」
脈拍から見て、
その言葉に嘘はないらしい。
さっきまで彼女に
どう打ち明けようか
迷っていた自分が、
なんだかものすごく
滑稽に思えてくる。
「楽しい……私と
居るのがですか?」
「はい。あ、ハンバーグは
ビッ◯ボーイがいいです」
「その余計な一言がなきゃ
とても可愛いんですけどね」
「それから鬼灯様の奢りで」
「あまり調子に乗ると
本当に犯しますよ。
いえ、私が出しますが」