第4章 鏡ノ塔
「ん……あ、れ……ここは」
再び鬼灯の運転する車中で
意識を取り戻した薺は、
寝ぼけた声で問いかける。
信号待ちで窓の外を眺めていた
鬼灯・・・扮する加々知は、
薺の声に反応して
ゆっくりと
彼女の方を見た。
「薺さん……これから、私が、
貴女にお話することなんですが」
そんな言葉で切り出した加々知は
直前で思いとどまって口を噤む。
話していいのだろうか。
自分と紗英と、それから
白澤の間で起きたことを。
相手は普通の人間で
しかもまだ十六歳だ。
話の全てを理解するのだって
難しいだろうし、ましてや
自分ですら混乱している現状を
年端もいかぬ少女に
どう説明すればいいのか。
自分の言葉の続きを待つ薺。
そんな彼女と目が合った瞬間、
加々知は想いもよらぬ言葉を
薺の口から聞くことになる。