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(R18) 雑草ノ花 (弐) ─鬼灯の冷徹─

第4章 鏡ノ塔



鬼灯は過去に一度だけ、
紗英の墓参りに
訪れたことがある。

それは彼女が地獄を去ってから
四十九日目のことなのであったが、

白澤も同じことを考えたのだろう。

先客として紗英の墓前に座り
ひとり晩酌をする白澤は、
声も上げずに泣いていたという。

あれだって一応、神だ。

神が愛のために流す涙を
ズケズケと邪魔するほど、
鬼灯も不粋な男ではない。

恋敵ではあれど
同じ女を愛した。

彼女を失って、きっと、
あいつも同じように
深く深く傷ついている。

音を立てずに踵を返した
鬼灯は自らの想いに
何重もの鍵をかけて

それから、二度と紗英の墓を
訪れることはしなかった。

鬼が初めて神獣に見せた
彼なりの優しさである。
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