第4章 鏡ノ塔
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現世日本にありながら、
常世の空気に支配された
小さな墓場に男女が二人。
幼くして亡くなった
子供の魂を慰めるために
建造された、鏡ノ塔。
そこに映るのは
他の誰でもない
紗英の姿だった。
「……鬼灯、さま」
鏡の中で紗英が言うと
現実にいる薺の口が動く。
その妙な現象を前にして
鬼灯は一度だけ大きく
そして、深く嘆息した。
「…………紗英さん」
十六年振りの再会。
幾千幾万の刻を過ごしてきた
鬼灯だが、これほどまでに
刻の流れが遅いと感じた事は
なかったという。
「やっぱり思った通りでしたか」
鬼灯はまるでガラス細工に
触れるかのように、震える
指先で薺の頬をそっと撫でた。