第4章 鏡ノ塔
その妖気に当てられたのか、
気付けば墓場の樹々はざわつき
無数の人魂が飛び交っている。
「あの……今は、鬼灯さんですよね」
「え?……ああ、そうですね。
薬を飲み直すまでは鬼灯です」
他愛ない言葉を交わしながら
上品な手付きで線香に火を灯す。
そんな彼の横顔は
睫毛が長くて、どこか儚げで
なんとなく見とれてしまった。
その時だ。
ゾワ……ッ
背筋を妙な感覚が駆け抜けて
私は咄嗟に後ろを振り向いた。
何もいない。
気のせいか──首を傾げて
墓石に向き直ろうとする。
「…………誰……?」
鏡ノ塔と書かれた慰霊碑に
映り込んだ女性が、じっと
ワタシのことを見つめていた。