第4章 鏡ノ塔
訳がわからないまま
誰の物とも知らない
お墓にそっと手を合わせる。
チラリと隣を伺い見ると、
そこには静かに目を瞑る
──鬼が居た。
「…………?!」
ビックリした。
いや、すごくビックリした。
どのくらいビックリしたかと言えば
……まあそんな話は置いておいて。
幽霊や妖怪の類は
子供の頃から何度も
見てきたのだけれど。
あまりに突然の出会いだったから
気にしている余裕もなくて、
今まで全然気が付かなかった。
この人は、……鬼灯さんは、
恐らくとても位の高い鬼だ。
ドライブ中に何度も聞いて
やっと教えてもらったのだが、
魔女が作った人間に化ける薬。
あれは妖気まで封じ込めてしまう
ある意味では恐ろしい代物らしい。
擬態が完全に解けた鬼灯さんは、
並の人間なら即気を失うであろう
凄まじく濃い妖気を放っていた。