第4章 鏡ノ塔
「え……なん、で」
恐怖と疑念がないまぜになって
彼女の表情筋を強張らせている。
ほとんど街灯のないここは、
美しい夜景が見渡せる
小高い丘の上にあった。
「ここって……お墓、ですよね?」
ますます訳が分からない。
そう言いたげに顔つきを
険しいものにする彼女を
「ええ、墓ですよ」の一言で
押し出して墓場の門をくぐる。
愛用している鞄から取りだすのは
一本の懐中電灯と、一束の線香。
いくら自分が死人だからとは言え、
やはり愛した女の墓参りとなると
心が苦しくなるというものだ。
「さあ、着きましたよ。
…………ここです」
細々とした灯りを頼りに
墓場の中心部へ進んだ所。
鏡ノ塔と呼ばれる慰霊碑に
寄り添うようにして、
紗英の墓は静かに佇んでいた。