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(R18) 雑草ノ花 (弐) ─鬼灯の冷徹─

第4章 鏡ノ塔



「え……なん、で」

恐怖と疑念がないまぜになって
彼女の表情筋を強張らせている。

ほとんど街灯のないここは、
美しい夜景が見渡せる
小高い丘の上にあった。


「ここって……お墓、ですよね?」


ますます訳が分からない。

そう言いたげに顔つきを
険しいものにする彼女を
「ええ、墓ですよ」の一言で
押し出して墓場の門をくぐる。

愛用している鞄から取りだすのは
一本の懐中電灯と、一束の線香。

いくら自分が死人だからとは言え、
やはり愛した女の墓参りとなると
心が苦しくなるというものだ。

「さあ、着きましたよ。
…………ここです」

細々とした灯りを頼りに
墓場の中心部へ進んだ所。

鏡ノ塔と呼ばれる慰霊碑に
寄り添うようにして、
紗英の墓は静かに佇んでいた。
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