第4章 鏡ノ塔
「あのね……鬼灯さん」
「今は加々知さんです」
「……じゃあ加々知さん。
これは、一体どういう
状況なんでしょうか?」
声のトーンを落として、
引いたところから
問いかける少女。
まあ無理もないのだが、
そんなに警戒されると
余計に虐めたくなってしまう。
「どういうって……私が
運転する車に乗ってますね、
二人きりで。まるでデートだ」
わざとらしく言った
私の横で、少女は
顔を真っ赤にした。
「何言ってるんですか!?
からかわないで下さい!」
「からかってません。本気です」
「〜〜〜!」
現世の年号が昭和の頃に
取った免許が役立つとは、
何事もやってみるべきである。
茹でた蟹のごとく
赤に染まった彼女を尻目に、
私はそんな事を考えていた。