第13章 雑草ノ花
誰が何と言おうと長かった。
生まれて初めて
指折り数えて、
柄にもなく
この日だけを
ずっとずっと
待ち続けていたんだ。
『薺おばあちゃん!』
『ふええん……嫌だよお……』
『おばあちゃん目を開けて!』
不謹慎と言われれば
そうなのかもしれませんね。
私だって、お迎えで
こんな風に浮き足立つのは
最初で最後の経験ですよ。
だから、今日くらいは
どうか許してください。
「…………薺さん」
純白のベッドを囲む
孤児院の子供たちの間を
そっとすり抜けて、
愛しい貴女を呼んだ。
胸の前で手を組んだ貴女が
すう、と二重に見えて
それからふわりと微笑む。
「鬼灯、さま……本当に
来てくださったんですね」
「当たり前でしょう。
どれだけ待ったと
思ってるんですか」
「ふふ……すみません」
今日は、
私が一番愛する女性の
現世での最期の日だった。