第11章 終わりのはじまり
嘘みたいにダッサイ格好の
白澤様が買ってくれた
耳を頭に装着しつつ、
悔しいくらい格好良くて
おしゃれなジーンズ姿の
鬼灯様と手を繋いで、
薄暗い洞窟の中を歩く。
私の人生史上最大に
幸せな瞬間、なのに
どうしようもなく怖い。
『私の、……私と紗英さんの、
私達の魂を分けられませんか』
【魂の分割】
私がそれを申し出た瞬間の、
白澤様の凍った表情が
頭から離れてくれない。
『…………できるよ。
でも、とても危険だ』
彼とは思えないほど低く
重々しい物言いだった。
それでもいい、と言った私
だめだ、と断り続けた彼
私たちの問答を
鬼灯様は、ただ黙って
静観していた。
なおも食い下がる私に
ようやっと白澤様が
根負けしたときには、
とっくに夜が明けていて
地獄の明け烏がけたたましく
鳴いていたのを、よく覚えてる。