第10章 花割烹狐御前
「かなわんなァ……」
薺、わしゃお前さんが
ちょいとばかり羨ましい。
「気色悪いって言ったのは
どの口だ言ってみろ白豚」
「はにゃまか(だから金棒
口に突っ込まれて言える訳
ないだろってんだよ鬼!!)」
「お二人共……もう少し
仲良くしたらどうですか」
誰もが羨む愛情を
その一身に受けて
すくすく育つお前さんが。
どうしようもなく
羨ましくて、眩しいよ。
「そいじゃ……わしは
ここらでお暇しようかね」
その後、彼らが何を
話し合っていたのか
わしは知らない。
きっと知る必要もない。
なァ、紗英──
幸せにおなんなさいよ。
目頭が熱くていけねえや。
【十ノ章】
花割烹狐御前___終