第10章 花割烹狐御前
それはゾワリとやってきた。
ああ、なるほどな──
白澤の兄さんもつくづく
因果な御人だねェ。
ビリビリと全身の毛が
弥立つほどの霊気と殺気
こんなもんを出せる人は
あの方しか居るめェよ。
「兄さん……アンタがどんな
お痛したのかは知りやせんがね、
うん……安らかにお眠りくだせェ」
合掌。その直後。
ドガシャーンッ!
「死にさらせ淫乱爺!!!」
ふっとんだのは金棒
……と、中国妖怪の長
ついでに金屏風が少々
鬼灯の旦那、あなたみたいな
お偉いさんにゃ到底
分からんでしょうがね
……その屏風一枚でわしゃ
一生暮らしていけるんですぜ。
「やれやれ……昔と
なんも変わらんのう」
そう言って肩を
すくめてみせると、
隣にいたお前さんが笑って
ポッと頬の毛が逆立った。