第16章 強き王・バリー【バリー/N】
「……っ……バカがっ」
『バカって酷い……私は冗談で言ってないのよ?』
「悪かった、オレが……」
『っ!?』
自分の妃になりたいと言われた時のバリーは、照れた様に顔を赤く染めて居た。
顔を背けられ明かりもないので、彼がどんな表情をしているのかユウキには分からなかったが、謝られた事には酷く驚いてしまう。
「戦いの事で頭がいっぱいで、ユウキの事まできちんと気が回らなかった……悪ぃ」
『……っ……分かってるから謝らないで?私がバリーの邪魔してるのは事実だもの』
バリーの口から謝罪の言葉を聞けるとは思って居なかったユウキは、ずっと気を張っていたので緩んだ様に目尻からポロポロ涙を流す。
(敵だからと本気で嫌われて居たらどうしよう)
ずっとそう思っていたユウキ。
付き合って居ても好きな気持ちは私だけなんだと思ったら、そのまま離れたまま帰るなんて耐えられない。
「ユウキ……」
バリーは静かな声でユウキの名前を呼んだかと思えば、グイッと引き寄せる。
『ん……』
月明かりに自分達が照らし出されると、ユウキの目の前にはバリーの顔があった。
キスされた事に気付くのが遅れてしまい、真っ赤な顔をして慌てるユウキ。
バリーの口付けは彼女を慰める様に優しく温かいものだった。
ユウキはそんな彼に応え様と、首に細い腕を回して抱き締める。
「んっ……お前が帰る必要はねぇよ、他の奴に燃やされない内は好きにしていろ」
『ありがとう、バリーっ……大好きよ』
「あぁ、オレもだ」
『……っ……強い王様になるんでしょ?私ももっと鍛えないと……バリーのお妃様になる為に!』
「あぁ、もう二度とあんなチビに何か負けねぇよ。オレももっと強くならねぇと」
『バリー、とても良い顔してる……素敵っ!』
ガッシュと出会った事で、彼は良い方向に変わろうとしている。
私達はお互いに強くなる事を誓って、その日一晩中暫しの別れを惜しむかの様に抱き合った。
だからと言って私とバリーの、心の溝が埋まったとは思えない。
バリーはこれからどんどん強くなって行く。
それなのに私がこのままでは、彼に不釣り合いだと思う。
だから私はバリーの傍から離れる事にした。
彼に見合う女になる為に。