第16章 強き王・バリー【バリー/N】
ユウキと本の持ち主は脳内に疑問符を浮かべたまま、二組の戦いの行方を見続ける。
バリーが戦っている間、ユウキはずっと胸元で自分の両手を握っていた。
彼に勝って欲しくて、まだ負けないでと願いながら。
(何であんな事言われたのに……ユウキは、あいつの事……)
この戦いは圧倒的にバリーの方が押して居た。
一つ一つの技の威力、攻撃のチャンスの作り方、身体の頑丈さ。
ガッシュ達の方がボロボロで、最大呪文【バオウ・ザケルガ】を喰らってもバリーは立っていた。
「まだだ……まだイライラはおさまらねぇ……つまらん、お前らそれで終わりか?」
バリーもボロボロの状態だが清麿も最大呪文を使った事で、地面に伏せて既に動けなくなっていた。
それでもガッシュは諦めず、本の力のないままバリーに立ち向かって行った。
『あんな小さい躰のどこに……力が……』
「何か強い想いがあるんじゃないか?……負けたくないと思わせる何かが……」
『強い想い?……っ……バリー……』
「くそ、良い加減本を渡して、大人しくしやがれー!!」
「ここは通さぬー!!」
もう戦う事は不可能に近い状況でも、ガッシュ達は絶対に諦めなかった。
清麿に攻撃しようとしたバリーの前に、両腕を目一杯広げて行く手を小さい躰で防ぐガッシュ。
しかし、バリーの拳はガッシュに当たる前に、ピタっと止まってしまう。
バリーがガッシュに怯んでいるのだ。
もう戦う力も少ない、小さい子供の目に
「勝負はここまでじゃ」
「何!?グスタフ!?」
「ガッシュと言ったな……お前はどのような【王】を目指しておる?」
「やさしい……王様だ!」
術も使えない、躰も傷付いた状態でも、ガッシュの眼差しだけは真っ直ぐしっかりとしていた。
それだけ強い想いがあるのだろう。
「チンピラ同然の考えしか持たんお前に、この者の志ある目は殴れん。」とグスタフはハッキリ、ガッシュとの違いをバリーに告げる。