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淡い恋心

第2章 風邪の移し方【一角/N】



一角が渋々でも折れてくれたのを見て、悠鬼はまるで子供の様に無邪気な笑顔を見せる。
照れている愛しい彼を見て、悠鬼は唇に気持ちを込めて頭にチュっと触れさせる。

「誘ってんのかよ?襲うぞ」

『ごめんなさい、好きだなぁって思って』

「……っ……平気で言うなよ」

『ふふっ……はい、あ~ん!』

普段から「好きだ」「愛してる」等と甘い言葉を言わない一角にとって、悠鬼の時々どストレートな告白には赤い顔も隠し切れず戸惑ってしまう。

『……美味しい?』

「……んっ」


結局一角は恥ずかしがって居ながらも、お粥を全て悠鬼に食べさせて貰った。

(たまには悪くねぇな……)と上機嫌な彼女を横目に見て思うのだった。

『はい、お薬飲んで』

「薬も飲ませろよ」

『あ~ん!』

「違ぇよ、口移しだ」

一角の言葉を聞いて(なら)と先程と同じ様にやってあげ様と、悠鬼は薬を指で摘まみ彼の口に近付けるが、手首を掴まれて止められてしまう。

『風邪移っちゃうじゃない、ダーメ!』

「甘えろって言ったの誰だよ」

『い、言ったけど……もう、私だって頭で我慢したのにっ』

「やっぱ、シてぇんじゃねぇか」

悠鬼の困惑した様に恥ずかしがる姿が堪らなく好きな一角は、距離を縮めてじっと相手の目を見つめる。
ここで押せば悠鬼が折れるのも分かっている為、企む様に笑みを浮かべる一角。

『これは本当に一回だけよ?』

「あぁ」

悠鬼は正座から膝立ちになると、少し緊張した面持ちで自分の口内に薬と水を入れる。
チラっと一角を見ると目が合っているので、相手の目を隠そうとするが両手を掴まれて叶わなくなってしまう。

『……んー!』

「面白ぇから隠すなよ……悠鬼がどうやって飲ませるのか見てぇんだから」

一角のその表情は意地悪な子供見たいで、二人の立場は先程と違い逆転している。
悠鬼は羞恥心で顔を赤く染めながらも、ゆっくり一角と唇を合わせる。

『んっ……』

一角の喉がゴクリと鳴り、自分の口から薬を飲んでくれた事が分かった悠鬼は、そっと彼から口を離そうとする。
が後頭部と腰に腕を回されて、悠鬼は一角から離れる事が出来ずにいる。

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