第10章 ヤキモチ妬きの長男【虎太/N】
呆れ顔の竜持の隣には、膨れっ面で悠鬼達を見下ろしている虎太がいた。
『虎太ちゃん、お顔変よ?』
「ヤキモチ妬いてるんですよね?」
「妬くなよ、虎太」
「や、妬いてねぇよ!」
『ふふ、虎太ちゃんも私とチューする?』
「……っ……」
三人でからかうものだから、本当に怒って出て言ってしまった虎太。
リビングには笑い声が響き、悠鬼と鳳荘は立ち上がる。
「悠鬼さん、怪我してませんか?」
『うん、大丈夫!……私より鳳ちゃんが頭打ったでしょ?』
鳳荘の頭を心配そうにナデナデする悠鬼。
そんな相手にふっと軽く笑みを見せた鳳荘は、悠鬼の手を掴み。
「オレは平気だから、虎太の機嫌直して来いよ」
「クス……ヤキモチ妬きなのも困りますね?」
「いや、あれは普通に妬くだろ」
『ふふ、じゃ行って来るね?』
悠鬼はリビングを出て階段を上がって行くと、虎太の部屋にノックをして入って行く。
部屋の主は後ろを向いているので顔は分からないが、そっと近付いて虎太の腕に触れる悠鬼。
『虎太ちゃん、何に怒ってるの?』
「何にって……」
『からかった事?……それとも鳳ちゃんとチューした事?』
「……っ……別に……怒ってねぇよ」
悠鬼はそっと後ろから虎太の表情を伺って、少し目を見開いて驚くが直ぐに嬉しそうな表情を見せる。
虎太は必死に感情を押さえて妬いてる気持ちを隠そうとしているが、顔に書いてあるのが丸見えなのだ。
悠鬼は虎太の前に回るとその可愛さに耐えられず、彼の背中に腕を回してぎゅっと抱き締める。
「!?」
『虎太ちゃんはどうしたら機嫌直してくれるのかなぁ?……ファーストキスは鳳ちゃんとしちゃったし……』
「は、初めてだったのか!?」
『ほっぺにはいつもしてるけど、お口は初めてよ?初めては好きな人にあげたいもん!』
悠鬼はいつも三つ子に平等である。
頬にキスをしてくれる時だって、本当は竜持や鳳荘にはして欲しくない。
悠鬼には自分だけを見て欲しいと、虎太の一番の悩み事。