第10章 ヤキモチ妬きの長男【虎太/N】
『虎太ちゃんには、私のこれをあげる』
「?……っ……!?」
悠鬼は虎太の手を握ると、ぎゅっと自分の胸に押し当ててニコっと微笑む。
最初は意味が理解出来なかった虎太だが、それが解ると一気にかぁーっと耳まで顔を真っ赤に染めてしまう。
「お、オレだって悠鬼の事っ……」
堪らずに自分の気持ちを伝え様とした虎太の口を、悠鬼は両手で押さえて言葉を遮ってしまう。
『今はダーメ!……私達がもうちょっと大きくなって、その時に虎太ちゃんが本当に……私を選んでくれるなら……』
「……悠鬼」
『ね?』
「悠鬼はその時までオレの事っ……変わらない?」
『虎太ちゃん次第よ?』
言ってしまいたい気持ちの変わりに、虎太は力強く悠鬼を抱き締めて相手の肩に顔を埋める。
「……っ……悠鬼が他の男とキスするのやだ」
『うん』
「抱き付いてるのもやだ」
『うん』
「微笑んでるのも、優しいのもやだ」
『ふふ、ヤキモチ妬きなのも困っちゃう』
少しだけ自分より高い背中を、ポンポン叩きながら静かに虎太の不満を聞いていた悠鬼。
可笑しそうに笑えば、またムスっと拗ねてしまう虎太。
『分かった、虎太ちゃんが嫌がる事はしないって約束するから……嫌いにならないでね?』
「オレが悠鬼を嫌う事は絶対ねぇよ」
悠鬼は嬉しそうに微笑むと、少し背伸びをして虎太の頬にちゅっとリップ音を響かせながらキスを落とす。
将来なんて分からない。
もしかしたら相手の気持ちは変わっていて、自分から離れてしまうかも知れない。
例え兄弟の中でだって奪われたくない。
見透かされているかも知れないけど、悟られない様にと自分より小さい身体を抱き締める。
『ふふ……』
オレは腕の中で聞こえる、相手の笑い声に恥ずかしさを覚えてしまう。
悠鬼には強く出られない自分が……少し困る。
Fin.