第10章 ヤキモチ妬きの長男【虎太/N】
私のお家の隣には、幼馴染みの三つ子ちゃんが住んでいます。
三人共、お顔はそっくりだけど、性格は全然違います。
長男の虎太ちゃんは、無口で三人の中で一番口数が少ないけど、サッカーの事になると一番熱い。
次男の竜ちゃんは、丁寧な言葉遣いで普段は優しいけど、怒らせると一番怖い。
三男の鳳ちゃんは、口は悪いし意地悪だけど、時々不器用に優しい。
「悠鬼!オレのには人参入れるなって言っただろ!」
『ダーメ!好き嫌いしないで食べて!』
今日は降矢家の両親が、共に帰りが遅いという事で家事の出来る悠鬼が泊まりに来た。
そして夕飯の時間になって、リビングには悠鬼と鳳荘の口喧嘩をする声が響く。
『はい!鳳ちゃん、あ~ん!』
「い、良いって!」
『せっかく作ったんだから食べてよ!……ほら、あ~ん!』
「分かった!自分で食うからっ……おわっ!?」
『きゃ!?』
「鳳荘くん!」
「悠鬼!?」
悠鬼と鳳荘の喧嘩はいつもの事なので、気にせず食べていた竜持と、滅茶苦茶不服そうに食べていた虎太の二人は、急に消えた二人に驚いて立ち上がる。
そして虎太の顔は更に、ムスっと不機嫌になってしまう。
隣同士に座っていた悠鬼と鳳荘は、彼女が無理矢理食べさせ様としたので、鳳荘と一緒に後ろに倒れてしまったのだ。
『!?』
「!?」
お互いに驚いている二人。
鳳荘の上に倒れ込んだ悠鬼は、キスをして居たのだ。
『やぁ~!鳳ちゃんとチューしちゃったぁ!』
「……っ……そこ、もっと嫌がるか驚くかするだろ」
『何で?別にイヤじゃないよ?鳳ちゃんとチューするの』
「オレも別に良いけどよ……」
『?』
悠鬼は鳳荘とキスをして、照れてはいるものの嫌がらずに寝ている鳳荘に抱き付いている。
ちょっとというか大分嬉しそうにしていた悠鬼だが、鳳荘の視線の先を見上げる。