第38章 恋って難しい【勝呂/N】
「はぁ~……何や、俺に告れ言うとるんか?」
『ちゃうよ!ただ恋しかっただけやもん……竜ちゃんが忙しいのは解っとるけど』
「直ぐ人に影響されよって。その時が来たら言うって言うとるやろ、大人しく待っとけや!」
『竜ちゃんっ………男前やな~!惚れ直すわぁ』
「……ッ……もうえぇか?ホンマに帰るで!」
『ふふっ、竜ちゃんも抱き締めてくれたら放したるよぉ!』
「はぁ~」
あたしと竜ちゃんは両想いなのはお互いに承知済み、しかしせめて祓魔師になるまで浮わついた感情は抑えたいんやろう。
正直あたしはいつでも良いと思うとるんやけど、真面目な竜ちゃんを好きになってもうたんやから仕方ないわ。
いつもはあたしが勝手に抱き付いているだけなので、竜ちゃんから抱き締めてくれる事はない。
せやからまた呆れた溜め息を溢す竜ちゃんは、ぎこちなくもあたしをぎゅっと腕の中に抱き締めてくれた。
『竜ちゃん?』
もうそろそろ解放しようとあたしは腕を放したが、竜ちゃんの腕は背中に回されたまま。
(もうえぇのに……)と思いながら見上げると、竜ちゃんの耳は赤く染まっていた。
「お前、暖かいなッ……」
『ふふっ、ホンマ素直やないんやから!』
「やかましい!変な解釈すんな!」
『竜ちゃんのせいで余計ドキドキして寝られんようなるわ~』
「お前が来い言うたんやろうが!」
『竜ちゃんのご要望にお応えしてもう少しこのままで居ようかぁ?』
「応えなくてえぇわ!放せぇー!」
あたしに顔を見られない様にしていても、竜ちゃんも同じ様にこうして居たいと思うてくれてる事が伝わって来ると、あたしは可愛いと思ってぎゅぅっと強く抱き締める。
結局、竜ちゃんはあたしの気が済むまでずっと放さんでいてくれた。
あぁ、この人は何処まであたしを溺れさせたら気が済むんやろう……
あたしは竜ちゃんの背中が見えなくなるまで見送った。
次の日の朝、学校の階段を上がったところで燐くんや竜ちゃん達と話していると、顔を真っ赤にしたしえみちゃんが近付いて来て告白の返事を返しに来た。
それをあたし達は咄嗟に階段に伏せて見守る。
「ちょっとちょっと!めっちゃ面白い事になっとるやん二人~!!」
「シッ!静かに!」
『燐くん頑張ってぇ!』
二人にはくっついて欲しいと願うあたしは、小さく拳を握って応援する。