第37章 わがままな彼女【真弘/N】
悠鬼をベッドで寝かせて、五限目は二人共に保健室で授業をサボった。
祐一は悠鬼の寝顔をふっと微笑みながら見つめ、柔らかい頬をそっと手の甲で撫でる。
『真弘ちゃんッ……』
「本当に俺だったら良かったのにな……でも真弘の隣で笑っているお前を見るのも俺は好きなんだ」
「祐一!悠鬼は?」
「真弘」
悠鬼を保健室に寝かせたまま祐一は六限目を受ける為に、一人で教室に戻って来た。
それを見た真弘はガタッと音を立てて立ち上がり、少し焦りを見せて心配そうに問い掛けて来る。
「泣かせるなら俺が貰うからな」
「なっ!?」
「悠鬼は保健室で寝てるから連れて帰れ」
「俺がッ……悠鬼を泣かせたのか?」
「食事も喉を通らない程にな」
「……っ……」
悠鬼を泣かせた原因が自分なのは理解している真弘だが、理由が思い付かない。
いつも馬鹿みたいにニコニコ笑っているのに、ここ最近は自分を見る度に暗い顔をして少し避けられている気もする。
真弘はぎゅっと拳を握り締める。
「あいつにはお前じゃないと駄目らしい」
「お前がそれを言うのか!?アイツの事は俺が一番解ってるみてぇな感じだったろ!俺だってずっと一緒に居るのにッ!」
「それでも真弘じゃないと駄目なんだ。俺がどれだけ優しくして可愛がっても……」
「チッ……本当、アイツは手が掛かるな!」
「そこが可愛いんだろ」
「バーカ!」
同い年なのに自分達よりも精神年齢が低い幼馴染みだが、それでも憎めない可愛さがあり二人はいつの間にか彼女を想って笑い合う。
祐一とバトンタッチして教室から出て行った真弘は、溜め息を吐くと保健室へと歩を進める。
「悠鬼は……」
『んっ……』
「……っ……」
真弘が保健室には誰も居なく、悠鬼は一人でベッドで眠っていた。
カーテンを開けて中に入ると、彼女は目尻を真っ赤にして涙を流しながら未だに寝ている。
それを見た真弘はズキッと胸を痛め、息を詰まらせる。
『真弘ちゃっ……いやぁ……』
「何が嫌なんだよ?」
こんなに弱々しい悠鬼を見るのは熱を出した時くらいなので、真弘は彼女の頬を撫でて心配そうに小さく囁いた。