第37章 わがままな彼女【真弘/N】
「フィオナ先生って美人で優しくて良いよな~」
『……』
フィオナが敵のロゴスだと知る前、悠鬼は幼馴染みの真弘・祐一・拓磨・慎司そして玉依姫の珠紀と、学校の屋上で昼食を取っていた。
悠鬼の両サイドには真弘と祐一が座って居り、フィオナが学校に来てから真弘は毎日こういう事を言っている。
真弘以外のその場にいる全員が悠鬼の気持ちを知っているので、いつも煩いくらい明るくて元気な悠鬼がムスッと不機嫌丸出しな顔で食事をしているのを見て、拓磨・慎司・珠紀の三人はどうしようかと目を合わせる。
「悠鬼、もう良いのか?」
『……祐ちゃん』
「分かった」
弁当を半分も食べずに仕舞う悠鬼を横目に見た祐一は、相手が自分に向かって両腕を伸ばして来るので自分も途中で弁当を仕舞うと、悠鬼を抱き上げて立ち上がる。
「悠鬼先輩……大丈夫ですか?」
『……』
「あぁ、俺達の事は気にしなくて良い」
自分の首に腕を回して顔を埋めている悠鬼の頭を撫でながら祐一はそう言い返し、二人は屋上から出て行く。
「真弘先輩、最低です」
「鈍感ッスね」
「はぁ!?何でだよ!」
「祐一先輩、悠鬼先輩には凄く優しいよね?」
「さっきも言わなくても理解してる見たいですね」
「悠鬼先輩程、感情表現豊かじゃないけど好きなんだろ」
「……ッ……」
祐一は悠鬼を保健室に運ぶと、ベッドに腰を掛けて自分の膝の上に座らせる。
一向に首から手を放してくれず肩が濡らされて行くのが分かり、頭を優しく撫でて宥める。
『私の好きな人……祐ちゃんだったら良かったのにぃ』
「そうだな、俺だったら悠鬼を泣かせたりしない。いつも笑って居られる様に大事にする……でも悠鬼は真弘じゃないとダメなんだろ?」
『やだぁ!真弘ちゃんとフィオナ先生じゃ、そういう関係にはならないって思ってるけどッ……真弘ちゃんの目に他の人が映ってるのはイヤなの!』
「そうか」
『我が儘かな……重い?』
「悠鬼はそれくらいが良い……俺も真弘もお前に甘えられるのは嫌じゃないからな」
『あんまり優しいと調子に乗るよ?』
「今更だろ」
『へへっ』