第37章 わがままな彼女【真弘/N】
『んっ……?……真弘ちゃん?』
「やっとッ……目ぇ覚ましたか!」
暫くして悠鬼が目を覚まして瞼をうっすら開けると、自分が大好きな匂いに包まれて揺れている事に気付く。
躰を起こすと真弘が必死に自分をおぶって、帰路を歩いているのが解り声を掛ける。
『何で?』
「祐一が送って行けって言ったんだよ!」
『ヤダ!』
「おわッ!暴れんなよ!」
『今の真弘ちゃんキライだもん!』
「ぁあ゛!?何でだよ!」
『他の女の人を見てる真弘ちゃんはイヤ!』
「!?」
『フィオナ先生には負けちゃうけどッ……これからもっともっと綺麗になるからぁ!』
「……悠鬼」
『他の人見ないでぇ!私、真弘ちゃんが大好きなのー!ずっと前から大好きなの!』
今まで以上に最大級の我が儘だけれど、一番可愛い我が儘だと思う。
後ろから両目を塞がれて相手の顔は見えないけど、手も声も震えていて必死に自分を振り向かせ様としている。
真弘は悠鬼を下ろして振り返ると、脚に力が入らずに崩れそうになる相手を両腕で支え、可笑しそうに笑う。
「何だァ?ヤキモチか?」
『!?』
「ずーっとヤキモチ妬いて、ぶぅたれてたのかァ?あっ?」
『……ッ……真弘ちゃんが悪いんだよ!』
「いやー!モテるのも辛いなー!」
『調子に乗ってるっ……』
「んで、お前は俺とどうなりたいんだよ?」
『!?』
「言わねぇと悠鬼以外の女、見ちまうぞー?」
『真弘ちゃんと恋人になりたい!彼女になりたい!』
「しょーがねぇなァ!俺様の彼女にしてやるよ!」
『んぅ!?』
調子に乗ってからかいながら言って来る真弘に、悠鬼はキスをされて少し不満はあったけれど、ぎゅっと彼の躰を抱き締めて受け入れた。
『真弘ちゃん!おんぶ!』
「もう歩けるだろ!ヤダっつーの!お前重いから!」
『真弘ちゃんが力無いんだよー!』
「何だと!?」
『それにまだ好きって言ってない!』
「あ゛ぁ?言わなくても解るだろ!」
『ヤダぁー!ちゃんと言ってくれないと放さないから!』
「クッ、苦しい!」
『私は真弘ちゃん大好きだよ!』
「俺も悠鬼が好きだ」
『……ッ……聞こえなかったからもう一回!』
「絶対ぇ聞こえてたろ!もう言わねーよ!」
『やぁー!!』
Fin.