第36章 本当の心【黄瀬/N】
「悠っち来てくれたんスか!?」
『私が来たら迷惑だった?』
「えっ?」
『綺麗なお姉様が看病に来てるから教えてくれなかったの!』
「!?……違う!違うッス!……ごめん、ごめんなさいッス!悠っち!」
連絡しなかった理由を嫌な方向に誤解されたのが分かると、徐々に涙を溜める悠鬼に必死に謝る黄瀬は彼女を中に入れるとぎゅっと抱き締める。
俺が何度アピールしても自分に自信がないからと、中々告白を受け入れて貰えなくてやっと付き合える様になったのに、不安を煽っただけで結局泣かせてしまった。
『やっぱり私じゃ涼くんにっ……』
「違うッスから!悠っちに移したくなかったんスよ!」
『えっ……』
「だから俺は悠っちが好きッスから!俺の気持ち疑わないで下さい!」
『涼くんッ……』
「俺も悠っちに看病されたぃ……」
『涼くん!?』
フラれる!と焦る黄瀬はやっと理由を話す事が出来、言わなかった事に罪悪感を覚える。
移したくないと思っていたが看病はされたいと思っていたので、正直な気持ちを告げようとしたが更に熱が上がり悠鬼に倒れ込んでしまった。
「んっ……」
暫くして自分のベッドで目を覚ました黄瀬は、キッチンから聞こえる包丁の音に耳を傾けた。
目をうっすら開けて悠鬼が来てくれた事が夢じゃないと思い出し、静かに部屋を出てキッチンを覗く。
そこにはエプロンを着て料理をしている彼女がいたので、黄瀬は少し離れたソファーに深く寄り掛かりながら茫然とその様子を見つめる。
『きゃ!?……涼くん、いつの間にいたの?』
「ついさっきッス……良いッスね、悠っちがウチのキッチンに立って料理してるの」
『……っ……別に普通だよ!いつもしてる事だし』
「新妻見たいで幸せッス」
『涼くんッ……』
「今度からはちゃんと言うから、また看病して欲しいッス……俺、悠っちにフラれたら耐えられないッスよ」
『浮気したら許さない。けどもし涼くんに好きな人が出来たらッ……んぅ……ふァ』
自分に気付いて近寄って来た悠鬼の言おうとしている言葉を察してしまった黄瀬は、彼女の唇を自分の唇で塞いで普段以上の熱く激しい口付けを交わす。